My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 と、ライゼちゃんは漸くそこで立ち上がり、真剣な顔つきでその人たちの前に出た。

「この方々のことは後で説明します。それよりも、これはどういうことです。一体何があったのです」
「私達にもさっぱりなのです。いつものように作業をしていたら、突然火が上がったのです。あっという間に燃え広がり、この有様です……」

 その老人は力なく頭を垂れた。

「怪我人や逃げ遅れた者は……皆無事なのですか?」
「それは大丈夫です。早くに気付けたので、皆無事でした。……ですが、この雨が降ってなかったらと思うとぞっとします」

 農園のすぐそこに民家があった。
 嵐が来ていなかったら、そこにまで燃え広がっていたかもしれないのだ。

「あ、あの、」

 老人の後ろにいた痩せ細った男の人が言い辛そうに声を上げた。

「今日、珍しくカルダが園内の様子を見に来ていました」

 その言葉にライゼちゃんは目を見開く。

「確信はありません。ですが……」
「だが、カルダだってテテオの収穫が無ければ困るはずだ! なんでこんな」

 また違う男の人が悔しそうに声を上げた、そのときだ。

「あの野郎は今どこにいる」

 私の真横で低い声が上がった。

「ラグ?」
「どこにいる」

 彼は私を無視してもう一度繰り返した。
 訊かれた男の人は一瞬怯えたような顔をしてから口を開いた。

「あ、あの、もう駐在所に戻っているかと……」
「それはどこだ」
「この農園を抜け更に行くと船着場がある。そこに建っている白い家だ。行けばわかる」

 男の人に代わり、その方角を指差し答えたのはヴィルトさんだった。
 言われてすぐ、ラグはそちらに足を向けた。
 私は慌ててその後を追った。セリーンもすぐ後についてきてくれる。
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