My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
(そんなに怒鳴らなくってもいいのに)

 いじけた気分で口を閉じ、足元を見ながら深い樹海の中を進む。
 もう夜は明けているのにここは殆ど光が入ってこない。
 獣道もない、完全なる道なき道。
 木の根がいたるところに張り巡らされ、歩きにくいったらない。
 それなのにラグは一人でほいほい進んでしまって、こっちは追いかけるのに必死だ。

(一緒にいるなら少年の姿の方が良かったなぁ……)

 はっきり言って今の彼は苦手なタイプだ。
 でも彼は私を助けてくれた。
 しかも二人きり。(ブゥは寝ているし)
 険悪になるのは嫌だった。

「ねぇ、子供になるのもその魔ほ……魔導術なの?」

 途端彼の足がピタリと止まった。
 賞賛の意味で言ったのだが、気に障ってしまったのだろうか。
 また怒鳴られるかと思わず身構えるが、彼は背を向けたまま憎々しげな声で言った。

「……これは呪いだ」
「呪い!?」
「そうだ。術を使うとさっきのガキに変わっちまう。クソむかつく呪いだ!」

 吐き捨てるように言いまたズンズン歩き出すラグ。

 ……とりあえず私はこの事にはあまり触れないでおこうと心に決めた。
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