My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
19.フェルクレールトに響く歌
「ラグ!」
彼の後ろに追いついた私は息を整えつつ声を掛けた。
「ありがとう!」
「……なんでお前に礼を言われなきゃいけないんだ」
とびきりの笑顔で言ったのに、こちらを見てもくれないでこの冷たい一言。
その態度に少しむっとしながらも私はそのまま笑顔で続けた。
「だって、全部ラグのおかげで解決したでしょ? だから、ありがとう!」
そう、過去がどうであれ、ストレッタの術士である彼がいたからこそ、こうして上手く行ったのだ。
上手く行く保証も無いのに“銀のセイレーン”の力でなんとかしようとしていた自分。
最後向かってきたあのカルダの形相を思い出し、もしあの時一人だったら……と、今更ながらにぞっとした。
「あの野郎が気に食わなかっただけだ」
……どういたしまして、なんて言葉が欲しいわけではないけれど、せめてこちらを向いて答えて欲しい。
「あ。でも、銀のセイレーンのこと言っちゃって大丈夫だったの? 調査とか嘘ついちゃって」
「遅かれ早かれ、この国にはなんらかの調査が入るだろう」
そう答えてくれたのは後ろのセリーンだった。
「え、なんで?」
「ルバートでのことを思い出してみろ。その男も先ほど言っていたが、カノンがライゼ達を助けるところをあの場にいた全員が見ていた。銀のセイレーンと闇の民が関係しているかもしれないと、普通は考えるだろう」
「あ、そっか……」
自分のことで精一杯であの後ルバートがどうなったかなんて今まで考えもしなかった。
私たちがビアンカに乗って飛び立った後も、きっとあの街は大騒ぎだったに違いない。
……その騒ぎの中心が自分であることが、いまだに信じられないけれど。