My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「しかし、ここからストレッタへ行くとなると何ヶ月かかるかわからんぞ」
セリーンも気が進まないのだろうか、眉を顰め言った。
「え、そんなに遠いの?」
「ストレッタはランフォルセよりも更に北の地にある。私もまだ行ったことはないが……」
「北……。なんか、寒そうだね」
「あぁ、極寒の地だと聞く」
「極寒……!?」
思わず顔がひきつってしまった。と、
「この国に比べたら断然過ごしやすい」
ラグからそう酷く不機嫌そうな声が返ってきた。
そういえば、彼はこの国に来てからずっと「暑い暑い」と繰り返していた。ずっと寒いところで育ってきたなら、そういう文句が出てしまうのも仕方がないのかもしれない。
「また、あのビアンカを貸してもらえたらいいのだがな」
「あ、そうだよね! ライゼちゃんに頼んでみようよ!」
乗り心地は良いとは言えないけれど、何ヶ月もかかってしまうよりはずっと楽だし早い。
ラグも何も言ってこないところを見ると異論は無いということだろう。
「でもライゼちゃんはきっともうこの国から出られないよね。ライゼちゃんがいなくてもビアンカ、ちゃんと言うこと聞いてくれるかなぁ」
「そうだな。……それがだめなら明日来るというランフォルセからの連絡船に乗せてもらうか」
「やー、それはちょっと……」
冗談だが本気だかわからないセリーンの意見に私は苦笑する。
カルダと同じ船内で何週間も過ごすと思うと胃がおかしくなりそうだ。そう思った矢先。
「冗談じゃねぇ。あの下衆野郎と同じ船になんて乗ってられるか」
吐き捨てるようにラグが言った。彼も同意見だったみたいだ。
「そういえば、ラグあの時なんで急にカルダに会いにいく気になったの?」
私は気になっていたことを訊ねる。