My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
神導術士であるライゼちゃんの威厳に満ちた声が広場に響く。
カルダの話を聞いた村人たちは大きくざわめいた。
はじめ信じられないという顔をしていた人たちも、ライゼちゃんの話が進むにつれ徐々に笑顔へ変わっていき、
「もう、あの男に怯えなくても良いのです」
その一言を皮切りに、村人たちはどっと沸きあがった。
中には泣いて喜んでいる人もいて、これまで余程酷いことをされてきたのだろうと思ったらまた胸が痛んだ。
そんな村人たちの姿を、ライゼちゃんの傍らに立つヴィルトさんも眩しそうに目を細め見つめていた。
――ライゼちゃんは新たな混乱を避けるためか、終始ラグの名は出さなかった。
「しかしライゼ様、農園はどうなるのです? あれでは何も作れやしない。わしらの食うものも残り少ないというのに」
一人の年老いた男の人の言葉に村人たちの顔に不安が戻る。
でもライゼちゃんはそんな村人たちに笑顔で答えた。
「起こってしまったことは仕方ありません。また一から作り直しましょう。苗や皆の食糧は他の村から分けてもらえるよう私から頼みます。しばらくの間、皆には辛い想いをさせてしまいますが、私も出来る限りのことはします。皆で力を合わせて頑張りましょう」
すると、興奮したような大きな歓声があちこちから上がった。
「そうだ! もうカルダはいないんだ。皆で力合わせてあんな奴いない方がうまくやれるんだってところをランフォルセの奴らに見せてやろうぜ!!」
「そうよ、あの男がいないならどんな苦労も辛くなんてないわ!」
再び笑顔を取り戻しお互い顔を見合せて喜びを分かち合う村人たちを、とても綺麗な笑顔で見つめるライゼちゃん。
――このフェルクレールトとランフォルセとの関係が良くなったわけじゃない。
他国へ連れていかれてしまった人達が戻ってくるわけじゃない。
でも、ライゼちゃんやこの国の人達がこうして笑っているのを見ていると、何かが大きく変わったような……そんな気がしてならなかった。