My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「カノンさん、こちらへ」
「え?」
「皆に紹介させてください。セリーンさんも一緒に」
にっこり笑ったライゼちゃんに促され、私は慌ててセリーンの顔を見上げる。
「私は遠慮しておこう。柄ではない」
「え、でも、私も」
皆の視線がこちらに集中しているのを感じ、私も柄じゃないよと言いかけたそのときだ。
「お姉さん、また歌ってよ」
聞き覚えのある声に振り向き驚く。
「クラール君!」
そう、あのクラール君が友達に支えられながらも自分で立って、私に笑顔を向けてくれていたのだ。
初めて彼を見た時よりも大分顔色が良く、確実に回復に向かっているのがわかった。
「僕も、今度は一緒に歌いたいんだ」
「そうだよ! お姉さん! 早くこっち来てよー!!」
「一緒に歌おー!!」
そんな自分を呼ぶ声に、一気に全身の熱が上がる。
私はセリーンに軽く背中を押され、おずおずとライゼちゃんの隣へ進み出た。