My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「皆もう知っていると思うけれど、この方がカノンさん。カノンさんの歌のおかげでこのクラールも目を覚ましました。そして危険を顧みずにカルダのもとへ行ってくれました。私はカノンさんに深く感謝しています」
恥ずかしさのあまり視線が上げられない。きっと、今自分の顔は茹ダコのように真っ赤になっているだろう。
と、ライゼちゃんがこちらに身体を向けたのに気付き私は漸く視線を上げる。
「元々私がこの国へカノンさんをお連れしたのは、皆にカノンさんの歌を聴いてもらうため……。カノンさん、もう一度歌ってください。子供たちと歌ったあの歌を」
途端、子供達から歌って歌っての大コール。
心の準備も何も出来ていなくて頭が真っ白になりかけたけれど、その無邪気な笑顔に釣られていつの間にかこちらも笑顔になっていた。
「それじゃあ、昨日みたいに、皆も一緒に歌ってね!」
子供たちの歓声、そして合わさる歌声。
大人たちは私の髪色の変化に驚いていたけれど、逃げていくような人は一人もいなかった。
さすがに一緒に歌ってくれることはなかったけれど、嬉しかったのは私と同じように子供たちに釣られ皆笑顔になっていたこと。
――私はもうこの国を出てしまうけれど、もしかしたらその後もこのフェルクレールトの地に歌声が響いていくのではないかと、そんな確かな予感がした。