My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
20.赤く輝く国
「えぇ!? お姉さんいなくなっちゃうの?」
「もっと歌聴きたいよー!」
そんな子供たちの声に胸がキュンと苦しくなる。
本当は、この子たちにもっとたくさんの歌を教えてあげたい。そしてもっとたくさんの歌を歌ってほしい。
でも、
「ごめんね、もう行かなくちゃけないんだ。でも皆が歌を好きになってくれて、とっても嬉しい!」
笑顔で言うと、子供たちは再びはにかむようにして笑ってくれた。
「お姉さんがいなくなっても僕たち歌うよ! だから絶対にまた来てね」
「次にお姉さんが来てくれたときには私たちすんごく上手くなってるからね!」
「本当? 楽しみにしてるね!」
またこの国に来られるかどうかはわからない。――いや、きっともう来ることは無いだろう。私は元の世界に帰るために旅しているのだから。
けれど、私は本心からそう答えた。
「クラールもそのときには完全に元気になってるもんな!」
そう悪戯っぽく笑って言ったのはクラール君を支えている男の子だ。クラール君は少し恥ずかしげに、でも笑顔でしっかりと頷いてくれた。
――この場にラウト君が居ないのが少し残念に思えた。けれど、いつかきっと、ラウト君もクラール君だけじゃなく、この子たち皆と遊べる日が来るはずだ。……近いうちに、きっと。
「カノンさん、ありがとうございます。皆、最後にカノンさんにお礼を言ってお別れしましょう」
ライゼちゃんがそう言うと、子供たちは一斉に大きな声で「ありがとうございました!」と言ってくれた。
そのとき、子供たちの後ろに並んでいた大人たちも一緒に私に向かい頭を下げてくれて、なんだか急に気恥ずかしくなった私は、慌てて同じように頭を下げたのだった。
そして私は子供たちと、そして村人たちに見送られベレーベントの村を後にした。