My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
テントの立つ場所へと戻ると、ラウト君がとびきりの笑顔で迎えてくれた。
その向こうの木陰ではすでにラグが不機嫌な顔で待っていて、セリーンが後ろで小さく舌打ちするのが聞こえた。
ブライト君はやはりまだ朝見た時と同じ場所に腰を降ろしていて、私たちの姿を……、いやライゼちゃんの姿を見つけてすぐに立ち上がろうとし思いきり顔を顰めながらも口を開いた。
「よくご無事で!! どこも怪我などされませんでしたか!? 村人たちは、クラールはどうしていましたか? カルダは一体……!?」
自分の怪我がよっぽど大変なのに、そんなふうにライゼちゃんや村の皆を心配するブライト君に、思わず笑みがこぼれる。
そんな彼に私たちはこれまであったことを全て話した。
(……というか、ラグは何も話さなかったわけ?)
ブライト君が一人先に戻ってきたラグに何があったか訊かなかったわけがない。おそらくは私たちが帰ってきてから訊けとかなんとか言ったに違いない。
話し終えると彼は安心したというより、まるで自分がその場にいたかのようにげっそりと疲れた顔をした。聞いている間、彼の顔はまさに“百面相”であったから無理もない。