My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
 素朴な疑問だった。
 皆が銀のセイレーンを怖がる理由はわかった。
 それなら、なぜラグは私と居て平気なのだろうか。
 なぜ私を助けてくれるのだろうか。

 と、歩き始めたラグが低い声で言った。

「オレのこの呪いを解くには、お前の歌が必要なんだ」

(あ……)

 やっと納得がいく。
 そして、その言葉に少し嬉しくなった。
 私にも助けてもらった恩返しが出来る。

「歌うよ! どんな歌を歌えばいいの?」

 先行くラグの背中に向かって言う。だが、

「知ってたらとっくに歌ってもらってる」
「だ、だよね……」
「それにまだ条件がそろってない」
「条件?」
「……追々話す」

こちらを振り向きもせずに答えるラグ。

 やはり呪いのことになると途端に機嫌が悪くなるようだ。

(そりゃ、誰だって呪いなんて嫌だよね)

 でも一度可愛い姿を見ている私には、それほど嫌な呪いには思えなかった。
 むしろもう一度あの少年に会いたいくらいだ。……本人には絶対に言えないけれど。


 ――しかし、そんな事を考えたことを、私はこの後すこぶる後悔する事になる。
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