My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「グゥルル……」

 そんな低い音が聞こえた気がした。
 前を行っていたラグが足を止める。

「やっぱり、今何か聞こえたよね」
「しっ」

 ラグが私を制し、険しい表情で辺りを見回す。
 ――緊張が走る。
 いつの間にか、鳥の囀りが止んでいることに気付いた。

(なんだろう。もしかして、昨日の兵士……?)

 私もキョロキョロと近くを見回した。と言っても鬱蒼と木々の生える山の中、昼間とは言え視界は悪い。
 嫌な汗が出てきた。

「ちっ、テリトリーに入っちまったか?」

 ラグが小さく呟いた。
 彼も汗をかいているように見える。

(テリトリーって、動物? ……まさか狼とか?)

 この世界に狼がいるかどうかわからないが、何にしてもマズイ状況だろう。
 ラグが懐からナイフを取り出すのを見て確信する。
 私は小走りでラグに近寄った。

「グゥルルル……」

 次は確かに聞こえた。
 さっきより確実に近づいている。やはり何かの唸り声に間違いない。
 ごくりと唾を呑みこんだその時、葉擦れの音と共にそいつが飛び掛ってきた。

「!!」

 思わず身体を縮こませ目を瞑る。
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