My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
それから、幸いモンスターにも兵士にも遭遇することなく私たちは山を越えることが出来た。
ラグももう元の姿に戻っている。少年の姿だったのはだいたい一時間程に思えたが、前を行く彼の背が突然伸びた時は流石にぎょっとした。
「あ、灯り!」
行く手に町の灯りが見えたのは、日が完全に落ちた頃。
私は歓声を上げ、そのままその場にへたり込んでしまった。
宵の冷えた空気が汗ばんだ肌に心地いい。
こんなに歩いたのは生まれて初めてではないだろうか。全身の筋肉が悲鳴を上げていた。
足の裏はきっとマメだらけだろう。怖くて確認する気にもならない。
対してラグは全く息を乱すことなく平然としていて旅慣れているのがわかった。
と、その彼がこちらを振り向いた。
また怒鳴られるかと思ったが、
「ちょっとそこで待ってろ」
「え!?」
背を向けられ私は慌ててよろよろと立ち上がる。
「なんで? 私も……」
「そんな格好で入れるわけねーだろ。……服買ってくるから待ってろ」
自分の格好を見下ろして納得する。
日本ではごくありふれた制服姿だけれどこの世界では目立ってしまうだろう。
「あっ、ラグ!」
「なんだよ! 早くしねーと店が閉まるだろ!」
「あ、の、靴もお願いします……」
ボロボロになった上履きを指差しながら言うとラグは舌打ちひとつして今度こそ行ってしまった。
(……買ってきて、くれるよね)
私はまたもその場に座り込む。
きっとあの町が“セデ”なのだろう。
野宿にならずに済みそうで心底ホっとする。
ラグに遅れないよう頑張って進んだお陰かもしれない。
「でも、明日絶対筋肉痛だなぁ」
そう呟いてふくらはぎを摩っていたときだ。
町の方向からフワフワと白いものが飛んでくるのが見えた。
それがブゥだとわかり私は手を振る。
「ブゥ! 起きたんだね!」
「ぶっ」
まるで「おはよう」とでも言うようにブゥが返事をくれた。
ラグももう元の姿に戻っている。少年の姿だったのはだいたい一時間程に思えたが、前を行く彼の背が突然伸びた時は流石にぎょっとした。
「あ、灯り!」
行く手に町の灯りが見えたのは、日が完全に落ちた頃。
私は歓声を上げ、そのままその場にへたり込んでしまった。
宵の冷えた空気が汗ばんだ肌に心地いい。
こんなに歩いたのは生まれて初めてではないだろうか。全身の筋肉が悲鳴を上げていた。
足の裏はきっとマメだらけだろう。怖くて確認する気にもならない。
対してラグは全く息を乱すことなく平然としていて旅慣れているのがわかった。
と、その彼がこちらを振り向いた。
また怒鳴られるかと思ったが、
「ちょっとそこで待ってろ」
「え!?」
背を向けられ私は慌ててよろよろと立ち上がる。
「なんで? 私も……」
「そんな格好で入れるわけねーだろ。……服買ってくるから待ってろ」
自分の格好を見下ろして納得する。
日本ではごくありふれた制服姿だけれどこの世界では目立ってしまうだろう。
「あっ、ラグ!」
「なんだよ! 早くしねーと店が閉まるだろ!」
「あ、の、靴もお願いします……」
ボロボロになった上履きを指差しながら言うとラグは舌打ちひとつして今度こそ行ってしまった。
(……買ってきて、くれるよね)
私はまたもその場に座り込む。
きっとあの町が“セデ”なのだろう。
野宿にならずに済みそうで心底ホっとする。
ラグに遅れないよう頑張って進んだお陰かもしれない。
「でも、明日絶対筋肉痛だなぁ」
そう呟いてふくらはぎを摩っていたときだ。
町の方向からフワフワと白いものが飛んでくるのが見えた。
それがブゥだとわかり私は手を振る。
「ブゥ! 起きたんだね!」
「ぶっ」
まるで「おはよう」とでも言うようにブゥが返事をくれた。