My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「あ、あの……」
そのとき遠巻きに見ていた人々の中から声が上った。
兵士がおもむろにそちらを向く。声の主は初老の男性だった。
「その異国の服を着た娘、突然そこに現れたんだ」
そう言いながら不安げな表情で私の足元を指差す。
周りの人々も一斉にうんうんと頷いた。
「ま、まさかその娘、伝説の、銀のセイレーン……なのでは」
(銀のセイレーン?)
男性の声は徐々に尻すぼみになっていったが、確かにそう聞こえた。
「そうよ!」
また別のところから声が上がる。今度は女の人だ。
「だってその子、銀髪じゃない!」
「へ?」
思わず気の抜けた声が出てしまっていた。
私の髪の毛は昔から真っ黒だ。学校も親も厳しくて、染めたことなど一度もない。……はずなのだが。
恐る恐る頭の後ろに手を回し一つに結っていた髪の毛を確認する。
自分の目を疑った。
確かに銀髪――見事なシルバーブロンドだったのだ。