My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
それから程なくして包みを二つ抱えたラグが戻ってきた。
それまで私の肩に乗っていたブゥは彼を見つけるとふわふわ飛んでいき彼の頭にちょこんと降りた。
そこがいつもの定位置なのだろうか。
(……可愛いし)
「ほらよ」
突き出すようにして包みを渡される。
――心なしかその顔は赤い。
「文句は聞かねぇぞ。女の服なんて買ったことねーんだからな」
視線を外してブツブツ言うラグにお礼を言い、私は太めの木の陰で着替えることにした。
やはりどこかの民族衣装のようなデザイン。
でもそれと一緒にラグが履いているのと同じようなパンツも入っていてホっとする。
先ほどまで制服のスカートで、山道を歩くには全然向いていなかったからだ。
ハイソックスを履いているとはいえ、肌が出ている部分は小さなキズでいっぱいだ。
(もしかして、気づいてくれたのかな)
思い切って靴下を脱ぐと、案の定何箇所かマメが潰れて血が滲んでいた。
見なきゃ良かったとげんなりしながらもう一つの包みに入っていた靴に履き替える。
紐である程度サイズ調節できるもので、足にぴったりとフィットした。
着替え終わり今まで着ていた制服を先ほどの包みに入れラグの方に戻る。
「お待たせです」
「……それ、ここに捨てていけよ。邪魔になるぞ」
包みを指差し言われる。
……確かにこの世界ではもう着る機会は無さそうだ。
どうせ高校も卒業間近。向こうでももうほとんど着ることはないだろう。
少し躊躇したが、制服は着替えた木の陰に置いていくことにした。
「よし、行くか。ブゥ、お前はここな」
「ぶっ」
ラグが上着のポケットを開けるとブゥは言われるまま、すっぽりとそこに収まった。
(そっか、一応モンスターだもんね)
そして、私たちはセデの町へと足を踏み入れた。