My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

「お姉さん、ありがと~!」

 その声に顔を上げると、前方の家の戸口でこちらに大きく手を振る少年がいた。ラグの変身後の背格好と同じくらいの子だ。
 隣では母親らしき女性がお辞儀をしている。
 と、こちらに向かって歩いてきていた人物が振り返り、少年に応えるように手を振った。
 少年が「お姉さん」と言っていたから女性なのだろう。でも。

(背、高いなぁ~)

 目の前にいる長身のラグとそう変わらないように見える。
 こちらに向き直った女性は再び歩き出し、私たちとすれ違った。

「!」

 私は思わず振り返り目で追ってしまった。
 彼女は先ほどの店にいた傭兵たちと同じような格好をしていたのだ。
 これまでに見たこの世界の女性の服装に比べ露出度の高い動きやすそうな服。その上に軽そうな防具を纏っていた。
 そしてその背には大振りの剣。
 しかも暗くて良くは見えなかったがかなりの美人だったような気がする。

「ねぇラグ!」
「あ?」

 面倒くさそうにラグがこちらを振り返る。

「今の女の人も傭兵なのかな?」
「……だろうな」

 ラグが彼女の方を見ながら言う。

「ねぇ、あの人に頼めないかな!?」
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