My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 自分でも興奮しているのがわかる。
 傭兵は先ほどの店にいたようなむさ苦しい男たちしかいないと思っていた。
 女性で傭兵をやっている人がいるなら、是非お願いしたい。……だが、

「は? ……冗談じゃねぇ。女なんて弱いに決まってんだろ」

一蹴されてしまい私は肩を落とした。

「さっきの奴等に頼んだ方がまだマシだ」

 確かに先ほどの男たちと比べてしまうのは酷かもしれない。
 私が諦めの溜息を吐いていると、ラグが不機嫌そうに続けた。

「オレはなるべくなら術は使いたくねーんだ。だからモンスターに遭遇しちまった時、オレたち二人を守れるくらい強い奴じゃないと意味がねぇ」
「そっか。そうだよね」

(私の歌も、まだ当てにならないもんね……)

 と、そこでハタと気付く。

(傭兵を雇ったら、その人にも私が銀のセイレーンだってこと内緒にしてなきゃいけないんだ)

 またしても大きな溜息が漏れてしまった。



 その店の看板には枕らしきものが描かれていた。

(宿屋……だよね)

「いらっしゃいませ」

 中に入るとカウンターの向こうにいた初老の女性が笑顔で迎えてくれた。
 女将さんだろうか。
 ふくよかな身体に白いエプロンを着けたその姿は、優しいお母さんという感じでなんだか心がほっと安らいだ。

「一室頼む」
「はいはい。旅のお方だね、今日はゆっくりとお休みな」

 言いながら女将さんはラグに鍵らしきものを手渡した。

「上がってすぐの部屋だよ」
「あ、はい!」

 カウンター横にある階段をさっさと上っていくラグの代わりに私が返事をすると、女将さんはにっこり笑ってくれた。
 ラグの背中を見上げながら木の階段を半分ほど上ったところで、私は気付く。

(ちょっと待って。同じ部屋ってこと!?)
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