My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「クッソ……!」
壁に思い切り拳を叩きつけるラグ。
いつも不機嫌そうな彼だけれど、ここまでイラついた姿を見るのは初めてだ。
私はその大きな音に下に居る女将さんが気づくのではないかとヒヤヒヤした。
(やっぱり二人は知り合いだったんだ……。ラグは名前を知らなかったってこと?)
訊きたいことはたくさんあったが、流石に今は喋りかけられる雰囲気ではない。
どうにも気まずくて動けないでいると、彼の視線がゆっくりとこちらを向いて思わずビクリと肩が震える。
「おい、……足出せ」
「えぇ!?」
いきなり低く言われて戸惑う。
「足! 怪我してんだろ。治してやるからそこに座れ!」
「は、はいっ!」
有無を言わせないその言い方に私はすぐさまベッドに腰を下ろし、まだ慣れない手つきで靴を脱いだ。
何箇所か血の滲むその足を見て、ラグが顔をしかめる。
「痛かったんなら言えよな! ったく……」
ラグは文句を言いながら床に膝を付き私の両足に手を触れた。
――もしかして、魔導術で治すことができるのだろうか。
私は興味津々、彼の手を見つめる。
「癒しを此処に……」
ラグが囁くように言う。
途端傷口がムズムズと痒くなった。
数秒後ラグが手を離すと傷は跡形も無く綺麗に消えていた。
「すっごい! 治っちゃった!」
さっきまで血が出ていた箇所を摩りながら私は歓声を上げる。
「お前の持ってる治癒力を高めただけだ」
溜息混じりのその声にはっとして私は顔を上げる。
小さなラグがそこにいた。
壁に思い切り拳を叩きつけるラグ。
いつも不機嫌そうな彼だけれど、ここまでイラついた姿を見るのは初めてだ。
私はその大きな音に下に居る女将さんが気づくのではないかとヒヤヒヤした。
(やっぱり二人は知り合いだったんだ……。ラグは名前を知らなかったってこと?)
訊きたいことはたくさんあったが、流石に今は喋りかけられる雰囲気ではない。
どうにも気まずくて動けないでいると、彼の視線がゆっくりとこちらを向いて思わずビクリと肩が震える。
「おい、……足出せ」
「えぇ!?」
いきなり低く言われて戸惑う。
「足! 怪我してんだろ。治してやるからそこに座れ!」
「は、はいっ!」
有無を言わせないその言い方に私はすぐさまベッドに腰を下ろし、まだ慣れない手つきで靴を脱いだ。
何箇所か血の滲むその足を見て、ラグが顔をしかめる。
「痛かったんなら言えよな! ったく……」
ラグは文句を言いながら床に膝を付き私の両足に手を触れた。
――もしかして、魔導術で治すことができるのだろうか。
私は興味津々、彼の手を見つめる。
「癒しを此処に……」
ラグが囁くように言う。
途端傷口がムズムズと痒くなった。
数秒後ラグが手を離すと傷は跡形も無く綺麗に消えていた。
「すっごい! 治っちゃった!」
さっきまで血が出ていた箇所を摩りながら私は歓声を上げる。
「お前の持ってる治癒力を高めただけだ」
溜息混じりのその声にはっとして私は顔を上げる。
小さなラグがそこにいた。