My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
その後ラグとは一言も交わすことなく、私もベッドに横になった。
静かになって、少し後悔する。
(ラグ、あんなに呪いのことを嫌がってたのに……。エルネストさんのこと悪く言ったってしょうがないよね)
私は勇気を出して、まだ小さな背中に向かい「ごめんね」と呟いた。
返事がなかったのでもう寝てしまったのかもしれないけれど。
明日大きな姿に戻ったラグにはもっと言いづらいと思ったから……。
それでも私は少しすっきりして、途端沈むように深い眠りに入っていった。
「おい、起きろ!」
その声で一気に夢から引きずり出された。
急いで起き上がるとベッドの足元で朝から不機嫌そうな大きいラグがこちらを睨むように見下ろしていた。
「おはよう……ございます」
気まずいながらも寝起きの掠れた声でとりあえず朝の挨拶をする。だが、
「先に下行ってるから早く来いよ」
ラグはそう言ってすぐに部屋から出て行ってしまった。
階段を下りていく足音を聞きながら、私は朝から小さく溜息を吐く。
少しだけ開いた窓から小鳥の囀りと眩しい陽の光が入ってきている。
――この世界に来て、二度目の朝だ。