My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
セデの町を出てどのくらい歩いただろうか。
陽はすでに頭上にあり気温も随分と上がってきていた。
高い木がなくなり、今道の両側にはどこまでも続く草原が広がっている。
日本ではあまり見られないその壮観な光景に思わず走り出したい衝動に駆られたりしたが、それは初めだけ。今はどこまでも続く同じ風景のせいで自分が全く進んでいないような感覚に襲われ半ばうんざりしていた。
こうもつまらないと、つい癖で鼻歌を歌ってしまいそうになる。だがセリーンさんの手前それはできない……。
この道はルバートまで続いているらしい。
人通りは少なく、随分前に行商人らしきおじさんとその後ろについた傭兵の男とすれ違ったが、今の時点で人を見かけたのはその二人だけだった。
平坦な道が続き身体的には昨日に比べると大分楽だったが、その分他のことに気が回り過ぎて精神的に辛かった。
(会話がないよ~)
先頭にラグ、背後にはセリーンさんがいる状況で、私はさっきからずっと妙な使命感にかられていた。
第一印象が最悪なせいもありこの二人はセデを出てから一切喋ろうとしない。
聞こえる音といえば3人分の足音と風に波打つ草の音くらい。
つい先日まで音や声の途切れることのない生活を送っていた私には耐えられなかった。
(何か喋らなくっちゃ……!)
「セリーンさん!」
思い切って後ろを振り返り声を掛けてみる。