My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「可愛いものを愛でて何が悪い」
「かわ……っ」
顔を引きつらせて絶句するラグ。
(確かに可愛いけど……)
私も心の中でこっそり同意する。声に出しては絶対に言えないけれど。
なんだか徐々に笑いが込み上げてきて、私は唇を引き締めるのに必死になっていた。
「か、解雇だ解雇!! 即行セデに帰りやがれ!!」
びしっとセデの方角を指さし怒鳴るラグ。
だがセリーンは何食わぬ顔で答える。
「嫌だ」
「な……っ」
「カノン!」
「は、はい?」
急にこちらを振り向いたセリーンに私の声はひっくり返る。
「お前はルバートまで護衛しろと言ったな。そこから海を渡るのか?」
「え、えと、そのつもりです、が……」
なんとなく声を小さくして言う。
「そうか、それは好都合だ。私も丁度、そろそろこの国を出ようと考えていた」
セリーンがふっと唇の端を上げ再びラグに向き直った。
「決めたぞ! ルバートまでとは言わず、どこまでもお前たちに付いて行ってやろう」
満面の笑みで言うセリーンに、ラグの身体がわなわなと震える。
「ふっ……ふざけんなー!!」
少年の怒声が風に乗りどこまでも響き渡った。