My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
そんなラグの小さな背中を見つめながら改めて……というか初めて気づく。
確かに私たちの関係は「利害関係」の上に成り立っている。
なんだか寂しい響きだが、事実なのだから仕方ない。
私は元の世界に戻る為に、エルネストさんに会わなければならない。
そのためにはラグの助けが必要で、ラグは呪いを解くために、私の「歌」が必要なのだ。
と、セリーンが何も反応しないことを不思議に思った私は、彼女の顔を見上げて、
「!?」
思わずその場から後ずさった。
「……呪いを解く、だと?」
「あ?」
地の底から聞こえてきたような低音にラグが再びこちらを振り返り、途端ビクリとその体を強張らせた。
そこには明らかに目が据わり、鬼気迫った表情の彼女がいた。その身体から滲み出る何かに私は身震いすら覚えた。そして。
「その素晴しい呪いを解いてしまうというのか!?」
彼女は悲痛なまでの叫び声を上げた。
それを聞いたラグの顔がこれでもかというほどに引きつる。
「絶対に阻止してやるからな!」
「あ、アホかあぁ~~!!」
拳を握り締め一人闘志に燃えるセリーンに、ラグが更に悲痛な叫び声を上げたのだった。