My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「文句があるならさっさとセデに戻れよ。オレは解雇だと言ったんだ、勝手についてきたって金なんか一切払わねーぞ。ったく、セデで払った分も返してもらいたいくらいだ」
片膝を立て、携帯用の食料である乾し肉を齧りながらラグが念を押すように言う。
「心配無用だ。カノンはこれからも精一杯守る。それに報酬など、あの子にまた会えるのなら……」
剣を背から外し私の後ろで胡坐をかいて座っているセリーンが淡々と続ける。
「寧ろくれてやるからあの子に会わせろ」
「ふざけんな」
そんな会話にまたも苦笑しつつ、私もラグからもらった干し肉を齧っていた。
何の肉かは敢えて訊かなかったが、噛むたびに濃い味が染み出てきて一日中歩いて空腹だった私には十分に美味しい食事だった。
欲を言えばもう少し量が欲しかったが、ルバートに着くまでの辛抱だと自分に言い聞かせる。
「ねぇラグ、ルバートまではあとどのくらいかかりそう?」
「あー、この辺は目印になるもんがねーからなぁ。明後日中には着くんじゃねぇか」
「明後日……」
ということは明日の夜も野宿決定だ。