My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
 元の世界に今すぐ帰りたい。
 でも此処に来た方法もわからないのに、帰る方法なんてわかるはずが……。

「あっ、あの曲!」

 そうだ。私はあの楽譜の曲を歌った。そして気付いたら此処にいた。

(あれがきっかけとしか思えない!)

 でも、今手許にあの楽譜はない。
 私は一度口ずさんだメロディーを思い出そうと頭を押さえ目を瞑った。――その時だ。

「歌っても無駄だよ」

 突然声がした。

 ぱっと目を開け私はそのままその瞳を大きく見開く。
 今さっきまで誰もいなかった空間に、人が浮いていた。
 でも驚いた理由はそれだけじゃなくて――。

(うっわあぁ~!)

 見事な金髪、見事な碧眼。
 そして体格から男の人だとわかるが一瞬女の人と見間違いそうな、見事な美貌。
 そんな人がこちらを見下ろし優しく微笑んでいるのだ。



 完全に場違いなその美しい人に私は一時目を奪われてしまった。
 しかしすぐに不自然さに気づく。
 その人の身体は宙に浮いている上に、透けていたのだ。

「ゆ、幽霊!?」

 思わず出てしまったその声は掠れたものになってしまった。
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