My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
きっと冗談だとは思うが、冗談に聞こえないくらいに二人の声には迫力があった。ドスの利いた声、とでも言えばいいだろうか。
「早く行こうよ! わ、私お腹空いちゃったし! ねっ、ラグ、お昼食べるくらいの時間はあるでしょ?」
早口でまくし立てる。
すると二人の視線がゆっくりと私に移った。
「……港にある店ならな」
「ルバートの海鮮料理か。あれは絶品だぞ。私も久し振りだ」
そして再び歩き出した二人に私はホッと胸を撫で下ろしたのだった。
(でも、やっと美味しい食事かぁ! いっぱい食べるぞ~!)
この4日間ろくなものを食べていなかった私は、なんだか急に足が軽くなった気がした。
……だが、そう簡単に美味しい料理に在りつけるほどこの旅は甘く無いということを、私はこの直後思い知ることになる。
街の入り口に人が二人立っているのが遠目に確認できた。
近付くにつれその二人の様相が明らかになり、私の体は硬直する。
「カノン?」
セリーンの声にもすぐには答えられず、私は足が震えそうになるのを必死で抑えていた。
見覚えのある物々しい甲冑。
大きな門の前に立っていたのは、嫌と言うほどに見慣れたあの兵士たちだった。
向こうもこちらに気づいたのか胸を張りまっすぐに私達を見据えた。
「なんだ? グラーヴェ兵とは珍しいな。……カノン、そんなに怖がることは無い。ちょっとしたチェックだろう。最近野盗どもが増えているからな」
私の足が止まったわけを、セリーンは田舎者の私が見慣れぬ兵士を恐れていると解釈したようだった。
その時こちらを振り向いたラグと視線が合った。動揺するなとその瞳は言っている。
私は小さく頷いて再び歩き始めた。
(大丈夫。あの時いた兵士とは限らないんだし)
自分にそう言い聞かせながら私は足を進めた。
「早く行こうよ! わ、私お腹空いちゃったし! ねっ、ラグ、お昼食べるくらいの時間はあるでしょ?」
早口でまくし立てる。
すると二人の視線がゆっくりと私に移った。
「……港にある店ならな」
「ルバートの海鮮料理か。あれは絶品だぞ。私も久し振りだ」
そして再び歩き出した二人に私はホッと胸を撫で下ろしたのだった。
(でも、やっと美味しい食事かぁ! いっぱい食べるぞ~!)
この4日間ろくなものを食べていなかった私は、なんだか急に足が軽くなった気がした。
……だが、そう簡単に美味しい料理に在りつけるほどこの旅は甘く無いということを、私はこの直後思い知ることになる。
街の入り口に人が二人立っているのが遠目に確認できた。
近付くにつれその二人の様相が明らかになり、私の体は硬直する。
「カノン?」
セリーンの声にもすぐには答えられず、私は足が震えそうになるのを必死で抑えていた。
見覚えのある物々しい甲冑。
大きな門の前に立っていたのは、嫌と言うほどに見慣れたあの兵士たちだった。
向こうもこちらに気づいたのか胸を張りまっすぐに私達を見据えた。
「なんだ? グラーヴェ兵とは珍しいな。……カノン、そんなに怖がることは無い。ちょっとしたチェックだろう。最近野盗どもが増えているからな」
私の足が止まったわけを、セリーンは田舎者の私が見慣れぬ兵士を恐れていると解釈したようだった。
その時こちらを振り向いたラグと視線が合った。動揺するなとその瞳は言っている。
私は小さく頷いて再び歩き始めた。
(大丈夫。あの時いた兵士とは限らないんだし)
自分にそう言い聞かせながら私は足を進めた。