My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「闇の民か」
横でセリーンが苦い顔で呟いた。
「闇の、民?」
「あの娘、運が悪かったな」
「え?」
「闇の民は、ここからずっと南の大陸に住む民族だ。なぜこのランフォルセに来たのか知らんが……あの娘、処刑されるぞ」
「なっ!?」
私はセリーンの口から出た言葉に驚愕する。
「なんで! 銀のセイレーン、だから?」
「……闇の民は、昔この国と敵対していた。未だ両国の溝は深い。銀のセイレーンというのは単に口実に過ぎないだろう」
紡がれる言葉があまりにも淡々としていて、ドクドクという心臓の音がいやに大きく聞こえた。
視線をゆっくり少女に戻す。日本で言う中学生くらいだろうか、まだ幼さを残した顔立ち。
「だから違います! 私は、銀のセイレーンじゃ……」
「ならこの髪はなんなんだ! えぇ!?」
男は彼女の長い髪を強く引っ張り上げた。体ごと持ち上げられた少女は顔を苦痛に歪ませる。
少女にそんな酷いことをしている兵士を誰も止めようとはしない。非難の声すら上がらない。
皆、彼女の運命をわかっているかのように顔に苦渋の色を浮かべて、遠巻きに見つめているだけだ。
「やめろよー! 姉ちゃんは銀のセイレーンなんかじゃないよぉー!」
「煩い! 闇の民のガキがぁ!!」
必死で足にまとわり付いていた少年を、兵士は無残にも強く蹴り飛ばした。
――体が勝手に動いていた。
後ろでセリーンが何か叫んだ気がした。
私は少年の小さな体を受け止めようと手を伸ばす。
ドンっと私の胸に少年がぶつかってきた。そのまま地面に背中を打ち付ける。
少し息が詰まったが……どうにか彼のクッションになれたみたいだ。
舞い上がった砂埃のおかげで視界が悪い。
私は瞬きを何度もしながらすぐさま上体を起こして、ぐったりとした少年の体をその場に優しく横たわらせた。
少年はひゅっと息を吸い込み直後激しく咳き込んだ。
横でセリーンが苦い顔で呟いた。
「闇の、民?」
「あの娘、運が悪かったな」
「え?」
「闇の民は、ここからずっと南の大陸に住む民族だ。なぜこのランフォルセに来たのか知らんが……あの娘、処刑されるぞ」
「なっ!?」
私はセリーンの口から出た言葉に驚愕する。
「なんで! 銀のセイレーン、だから?」
「……闇の民は、昔この国と敵対していた。未だ両国の溝は深い。銀のセイレーンというのは単に口実に過ぎないだろう」
紡がれる言葉があまりにも淡々としていて、ドクドクという心臓の音がいやに大きく聞こえた。
視線をゆっくり少女に戻す。日本で言う中学生くらいだろうか、まだ幼さを残した顔立ち。
「だから違います! 私は、銀のセイレーンじゃ……」
「ならこの髪はなんなんだ! えぇ!?」
男は彼女の長い髪を強く引っ張り上げた。体ごと持ち上げられた少女は顔を苦痛に歪ませる。
少女にそんな酷いことをしている兵士を誰も止めようとはしない。非難の声すら上がらない。
皆、彼女の運命をわかっているかのように顔に苦渋の色を浮かべて、遠巻きに見つめているだけだ。
「やめろよー! 姉ちゃんは銀のセイレーンなんかじゃないよぉー!」
「煩い! 闇の民のガキがぁ!!」
必死で足にまとわり付いていた少年を、兵士は無残にも強く蹴り飛ばした。
――体が勝手に動いていた。
後ろでセリーンが何か叫んだ気がした。
私は少年の小さな体を受け止めようと手を伸ばす。
ドンっと私の胸に少年がぶつかってきた。そのまま地面に背中を打ち付ける。
少し息が詰まったが……どうにか彼のクッションになれたみたいだ。
舞い上がった砂埃のおかげで視界が悪い。
私は瞬きを何度もしながらすぐさま上体を起こして、ぐったりとした少年の体をその場に優しく横たわらせた。
少年はひゅっと息を吸い込み直後激しく咳き込んだ。