My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 兵士の剣を自分の剣で受け止めたセリーンは、そのまま気合を吐いて相手の剣を薙ぎ払った。
 瞬間バランスを崩しかけた兵士だったが、すぐに立ち直り突然現れた敵を睨みつける。

「……傭兵風情が、国兵に剣を向けたな」
「ふん、彼女は私の雇い主なんでな。傷を付けられるわけにはいかない」
「ほざけぇ!」

 怒鳴り声を上げ兵士は容赦なく攻撃を開始した。

「ラウト! ラウトしっかり!!」

 その声に振り向くと、いつの間にか少女が少年を抱き起こしていた。
 少女のむき出しになった足は引きずられた痕で真っ赤だ。
 ラウトと呼ばれた少年は少しは楽になったのか、少女に抱きついてわんわん泣き始めた。

 周りにいる人たちの視線が剣を交えるセリーンたちの方へ集中している。
 それは単に好奇の目だ。
 それを見ながら、私の中に再び様々な感情が湧いてくる。

(これが、この世界の常識……)

 一見平和そうに見えたこの世界。
 しかし違った。
 このレヴールにも地球と同じような悲しい歴史や差別、争いがあるのだ。

(こんなの、嫌だ)

 私はゆっくり立ち上がると、スーっと息を吸い込んだ。


  ねぇ なぜ争うの?
  どこかで誰かが泣いている

  ねぇ なぜ戦うの?
  どこかで誰かが叫んでる

  心はみんな同じ
  楽しいときは笑うし
  悲しいときは涙が出るよね

  ケンカをしたら仲直り
  そしてみんなで歌いましょう
  そうすれば ほら また笑い合える

  小さな頃そうしていたでしょう
  ほら 思い出してみて
  そうすれば 世界は少し変わるはず


 歌声が辺りに響いていく。
 全身が火照ったように熱い。

 髪が、銀に輝く。
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