My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「あぁ、その通りだ。わかってんなら二度と余計なことに首突っ込むな!」
――彼は私を何度も助けてくれている。
でもそれは彼が“銀のセイレーン”としての私を必要としているから。
きっと私が銀のセイレーンでなかったら、先ほどの騒ぎなど気にも留めずに通り過ぎていたのだろう。
そう思ったら、急に悲しくなってきた。
セリーンも私が止めに入るまでは街の人たちと同じようにただあの子達を見ているだけだった。
私を見て驚いていた彼女の顔が頭に浮かぶ。
こうなってしまった以上、きっと彼女にももうお礼を言うことは出来ない……。
俯く私を反省していると取ったのか、ラグは深く溜息を吐いてそれ以上声を荒げることはしなかった。
「さぁて、これからどうするか。すぐにここまで追ってくるぞ。港も最悪封鎖されてるだろうな」
ラグのその言葉に私は顔を上げる。
「船に、乗れないってこと?」
「出国にはそれなりの手続きが必要になる。おそらくそこは張られてるだろ。……とりあえず、暗くなるまで身を隠せるところを探すか」
舌打ちしながら苦々しく言うラグ。
――そうだ。今は感傷に浸っている場合じゃない。
今捕まってしまったら全部おしまいだ。
ラグが術を使えない今、私の歌がまた必要になるかもしれない。
私は暗い考えを無理やりに振り払い、気を引き締めて立ち上がろうとした。が、
「あ、あれ?」
酷い眩暈に襲われ再びストンと座り込んでしまった。
(こんな時に、貧血!?)