My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
お礼を言ってその包みを受け取り開けてみると、出てきたのはどう見てもチョコレートで。
私は目を見開いてすぐさまそれを口に入れた。
とても甘くて、耳の下がジーンと痺れる感覚。
お菓子なんて食べたのは何日ぶりだろうか。
両頬を押さえて思わず幸せを噛み締めていると、
「……お前、本当に伝説の銀のセイレーンなのか?」
またラグに呆れられてしまった。
「さっきの兵士。私のこと生け捕りにするって言ってたね。……見つかっても、すぐに殺されることはないってことかな?」
私は眠ったように目を閉じているラグに小さく声を掛けた。――彼はすでに元の青年の姿に戻っている。
寝ていない証拠に、その眉根にはいつもよりも深い皺が刻まれていた。おそらくこの後のことを考えているのだろう。邪魔してしまっただろうか。
この辺りは本当に静かで、耳を澄ますと低い潮騒の音が聞こえてくる。
夕暮れが近いのか、頭上にある狭い空がさっきより大分色濃くなった気がする。
予想通り、あれから兵士達は現れていない。
と、ラグの空と同じ青い瞳がゆっくりと開いた。
「どうだろうな……。銀のセイレーンは一応伝説上の人物だ。捕まえて調べたいのかもな」
「調べる!?」
自分が手術台に縛り付けられ兵士達に囲まれている姿が脳裏に浮かび、慌てて打ち消した。
「それか、その力を利用したくなったか……」
「利用?」
「なんにしろ、他の国に渡って欲しくはないだろうな」
「……私って、そんなに凄いのかな」
「全くそうは見えねぇけどな」
全く、を強調されて少しむっとする。
「そりゃそうだよ。向こうじゃ普通の女子高生だったんだから……」
ブツブツ文句を言っていると、私を見るラグの視線が微妙に変わった気がした。それは人を哀れむ目に似ていて。