ヤマタノオロチ
前 六節
「スサノオウ様のおな~り~!」
けたたましい声が鳴り響く。
何十人、いや、何百人とも思える神官が、中央に向かって、手に床をつける形で頭を下げている。
そんな人が作りし道を、一人の男が歩く。
シルクの着物に身を包み、金の装飾が施された、冠をかぶり、腰には宝石がちりばめられた豪華絢爛の剣・・・草薙の剣をクビには、王家の印である勾玉で出来たネックレスをつけている。
髪の毛は耳の両側を8の字に結んだ『須賀結び』だ。
須賀の国の王・・・スサノオウ・・・ここに冠位・・・・・。
「ご苦労・・・。」
人が作った道を通り、上座にある一段と高い段のうえに用意された座布団の上に正座し、スサノオウは静かに声を上げる。
「先日の那須の国の戦による采配、見事でありました。」
先日、自分を迎えに来た男・・・ワノスケが深々と頭を下げながら、報告する。
那須の国との戦。
それが、スサノオウに最初に与えられた指名だった。
着任早々指揮を任されるスサノオウ。
だが、その采配は見事といわんばかりの手腕だった。
わずか三日。
戦力差があるとはいえ、後ろ盾に出雲がついている那須の国をわずか三日で陥落させるなど、常人の業ではない。
戦神・・・スサノオウ・・・。
後にそう呼ばれる男の誕生である。