ヤマタノオロチ
前 八節
「はやり、鮎しか釣れないか・・・。」
スサノオは、国の隅にある川にて釣りを楽しんでいた。
だが・・・はやり釣れる物は鮎ばかり。
イワナも鮭もピクリともしない・・・。
「まったく・・・魚を捕まえるというのは難しいな・・・オロチ・・・。」
改めて、師の大きさを垣間見る。
魚を釣る・・・ただ、それだけのことがこれほどに難しいとは・・・。
「凄いわ・・・こんなに大きな鮎?どうやって釣ったの?」
しかし、そんな鮎しか釣れない自分に嘆いていると、後ろから女性の驚いた声が聞こえてきた。
顔を向けると、そこにいたのは、自分と同じ歳か、それより若干若いぐらいの女性。
長い髪を後ろで束ね、懐かしい麻の着物を着ている。
「鮎ぐらい、誰だって釣れる・・・俺が釣りたいのは、イワナや鮭だ・・・。」
とりあえず、刺客ではないようだ。
だから、とりあえず安心してスサノオは視線を川に戻す。
「鮭?この時期に鮭なんて釣れるの?」
そりゃ、女が驚くのも無理はない。
「俺の師は、釣り上げていた。しかも、かなりの上物をな・・・。」
言うと、スサノオは釣竿を戻し、ポイントを変えて再び投げ入れる。