ヤマタノオロチ


「言ったはずだ!俺はこの目で見たものしか信じない!ヤマタノオロチが妖術を使わない限り、俺はコイツが妖術使いだとは信じない!」


 スサノオウはさらに大声を上げる。


 国中に響くように・・・。


 国中に知らしめるように・・・。


 コイツが、妖術使いのわけがないだろう!


 この方が、妖術を使うはずがないだろう!


 父を、母を、師を汚すな!須賀の国よ!!


「立派になったな・・・。」


 それは、オロチの小さな言葉。


 だが・・・スサノオウには確実に聞こえた、言葉。


 ・・・あなたのおかげです。


 そんな言葉が返せたら、どれほどよかったことか・・・。


 だが、そんな言葉を返すことできることなく、オロチは静かに国を立ち去っていった。


 スサノオウは、その夜・・・誰に見せるでもなく、かつて自分が暮らしていた、家の方角に向かい、深々と頭を下げた・・・。


< 46 / 70 >

この作品をシェア

pagetop