ヤマタノオロチ


「まぁ、気が向いたらな・・・しかし、鬼か・・・それまた愉快な噂が立っているものだ。」


 愉快・・・なんだ。


「なんだ?怖くないのか?オロチは?」


 だって、鬼だぞ鬼。


 熊よりも巨大で、虎よりも獰猛なんだぞ。


 とても、人間に勝てる相手じゃないぞ。


「そんなもの、本当にいると思うのか?」


 ・・・は?


「そりゃ・・・いるだろう?だって、村人全員が、いるって・・・。」


 みんな『いる』って言ってんだから、当然それはいるものだと・・・。


「俺は信じないね・・・そんな生き物がいるなんて。」


 しかし、オロチはそんなスサノオの言葉を一蹴する。


「なんでだよ?だって、村人全員が・・・。」


 言っているというのに・・・。


「村人全員が『いる』と言ったところで、俺はそんなもの見たことも、そんな存在の気配すら感じたことはない。俺は自分の見たもの以外は信じないんだよ。・・・それとも、スサノオは鬼を見たことあるのか?」


 ・・・うっ・・・それを言われると・・・。


「そりゃ・・・あ、でも見たものはみんな食われたのだろう?」


 反論してみるが・・・。


「だったら、尚のこと信じられないだろう?鬼を見たものはみんな死ぬ・・・だったら、その鬼はどこから現れたんだよ?」


 ・・・ぐっ・・・。


< 5 / 70 >

この作品をシェア

pagetop