偽婚
「兄弟でもこんなに似るものなんですね」
「性格は真逆だけどね。優斗はお母さんに似てのんびりしてたけど、柾斗はお父さんに似て細かくて口うるさいタイプでしょ」
「確かに」
「だから、優斗、言ってたの。『父の跡を継ぐのは俺より柾斗の方がいい』って。『俺より柾斗の方が決断力がある』、『なのに、柾斗は俺に憧れてるらしい』、『俺は本当はそんなにすごい兄じゃないのにな』って」
ずっとお兄さんを目標にしてきた、神藤さん。
でもお兄さんは、ちゃんと神藤さんのそのままを、認めてくれていた。
私は、何だか泣きそうになってしまう。
美嘉さんは、懐かしそうな顔で画像データを眺めながら、言った。
「私ね、来月からカナダに行くの」
「え?」
いきなりの言葉に、思考が追い付かない。
「えっと、出張か、旅行とか?」
「じゃなくて、留学」
「留学?」
「本当は向こうで永住したいんだけど、30になっても親が厳しくてね。だから、とりあえず留学って形で、2年くらいかな」
どういうことなのか、わからない。
困惑する私に、美嘉さんは笑い掛ける。
「優斗が死んでから、日本にいたら辛すぎて、現実逃避で海外ばかり行ってた頃があって。向こうでは、誰も私を知らないから、哀れまれたり、同情されたりしないでしょ? それでちょっと気が休まったりして」
「………」
「何度も海外に行ってるうちに、自然とここに住みたいなっていう場所を見つけて。それで親を説得してたんだけど、柾斗との結婚が破談になって、やっと諦めてくれたみたいで」
「性格は真逆だけどね。優斗はお母さんに似てのんびりしてたけど、柾斗はお父さんに似て細かくて口うるさいタイプでしょ」
「確かに」
「だから、優斗、言ってたの。『父の跡を継ぐのは俺より柾斗の方がいい』って。『俺より柾斗の方が決断力がある』、『なのに、柾斗は俺に憧れてるらしい』、『俺は本当はそんなにすごい兄じゃないのにな』って」
ずっとお兄さんを目標にしてきた、神藤さん。
でもお兄さんは、ちゃんと神藤さんのそのままを、認めてくれていた。
私は、何だか泣きそうになってしまう。
美嘉さんは、懐かしそうな顔で画像データを眺めながら、言った。
「私ね、来月からカナダに行くの」
「え?」
いきなりの言葉に、思考が追い付かない。
「えっと、出張か、旅行とか?」
「じゃなくて、留学」
「留学?」
「本当は向こうで永住したいんだけど、30になっても親が厳しくてね。だから、とりあえず留学って形で、2年くらいかな」
どういうことなのか、わからない。
困惑する私に、美嘉さんは笑い掛ける。
「優斗が死んでから、日本にいたら辛すぎて、現実逃避で海外ばかり行ってた頃があって。向こうでは、誰も私を知らないから、哀れまれたり、同情されたりしないでしょ? それでちょっと気が休まったりして」
「………」
「何度も海外に行ってるうちに、自然とここに住みたいなっていう場所を見つけて。それで親を説得してたんだけど、柾斗との結婚が破談になって、やっと諦めてくれたみたいで」