偽婚


美嘉さんと盛り上がり、いい気分のままに帰宅したら、神藤さんが先に帰ってきていて驚いた。



「わっ、ごめーん。今日、残業だって言ってたから、遅くなると思ってて」

「お前なぁ。昨日の今日で、心配して俺は仕事を持ち帰ってきたってのに、どこ行ってたんだよ」

「美嘉さんと飲みまくってたぁ」

「はぁ? 昼に会ったんじゃないのかよ」

「だからぁ、お昼からずっと飲んで喋ってたのぉ。私たち、友達になったからぁ」


私の言葉に、顔を引き攣らせる神藤さん。


私は、そんな神藤さんに、今日撮ったばかりの画像を見せた。

爆笑して映る、私と美嘉さんのツーショット。



「お前は本当に、俺の想像の及ばないことばかりする」

「あれ? 怒るのかと思った」

「もう怒る気にもならない。ふたりで楽しかったんだろ? だったら別に、俺がどうこう言うことじゃないだろ」


神藤さんは、美嘉さんのことになると、嫌にものわかりがいいらしい。

でももう、もやもやする気持ちにはならない。


神藤さんはため息を吐いた。



「あいつは俺が何を言ってもいつも泣いてばかりだったのに、お前といるとこんなにも笑うんだな。正直、負けた気分だよ。何をどうやったらこんなことになるんだか」
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