偽婚
変化
1ヵ月後。
美嘉さんがカナダへと旅立つ日。
私と神藤さんは、美嘉さんを見送るために、空港まできていた。
「美嘉さーん」
「杏奈ちゃーん」
抱き合う私たちを、神藤さんは少し引き気味に見ている。
ロビーを歩く人たちも、何事なのかとこちらを伺っているが、そんなことはどうだってよかった。
「メールするからね。スカイプもするからね」
「私も。何か困ったことあったらいつでも連絡してね」
私は、ぼろぼろ泣いていた。
美嘉さんも涙目だ。
「お前ら、いつの間にそんなに仲よくなったんだよ」
神藤さんだけは、別れの感慨がなさそうだった。
時間が訪れたので、私たちは体を離す。
「じゃあ、またね」
涙を拭う、美嘉さん。
「ふたり共、元気でね。あ、柾斗は杏奈ちゃんを大切にね」
「わかってるよ。お前もつまんないことでくじけるなよな。じゃあな」
最後は、笑顔で手を振って別れた。
私はその後ろ姿が見えなくなるまで、ずっと美嘉さんの背中を追っていた。