偽婚
立派な三代目になるために頑張っているだけかと思っていたが、他にちゃんとした理由があったなんて。



「たとえ、辛いことがあったって、うちのコーヒー飲んだらちょっとだけ気持ちが楽になったとかでいいんだ」

「………」

「どんな理由でも、うちの店にくる客のために、もっとよりよくしていきたいと思ってる」


会社の経営とか、私には全然わからないけれど、でも素晴らしい理念だと思う。

私は、応援したいと思った。



「確かに、おいしいものは人を幸せにするもんねぇ」


私の言葉に、珍しく神藤さんは前のめりに聞いてきた。



「たとえば、お前なら、どういうカフェに行きたいと思う?」

「えー? わかんないけど、京都で飲んだ宇治抹茶がこっちでも飲めたらいいよね」

「和カフェか」

「あと、チョコカフェとか? ほら、高級ホテルとかだと、有名なショコラティエとコラボして、ゆっくりコーヒー飲みながら、おいしいチョコ食べられるじゃない? でもあれ、高いんだよねぇ」

「あぁ、なるほどな。女はチョコ好きだもんな」

「そうそう、そういえば、キャバの時のお客さんが、どうせなら結婚式場じゃなくて、カフェとかで友達集めてラフな感じでパーティー婚にしたいって言ってる人がいたなぁ」

「それいいな」
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