偽婚

安堵



子供の頃、母は酔っ払う度に、「あんたなんか産むんじゃなかった」と、私に繰り返した。

そして母は、私を産んでから6人目に付き合った人と共に、消えた。


祖母もそうだ。

「買いものに行ってくる」と言って出て行ったきり、道端で倒れ、本当にもう二度と、帰ってくることはなかった。


元カレにしても、貯金を奪われたことはまだ諦められる。

しかし、それよりずっと、急に私の前からいなくなったことの方が悲しかった。



私は、たまたまこの世に生まれてきてしまっただけ。

生きていたって、社会のために何か役に立てるわけじゃない。


体中が痛すぎるし、もう死んでもいいかな。

こんなことになるなら、冷蔵庫の中のエクレアとチョコケーキ、食べておくんだったな。



あぁ、でももし生きていてもいいなら、今度こそちゃんと、神藤さんに伝えなきゃ。

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