偽婚
ひと通り、部屋を片付け、掃除をし、洗濯まで終わらせた。
疲れた私たちの昼食は、結局、カップ麺になってしまったけれど。
「ごめんねぇ、梨乃。せっかくの休みだったのに、私の付き添いだけじゃなく、掃除まで手伝わせちゃって。しかもお昼はこんなのだし」
「別に暇だからいいけどさ。でも、あの、何でも完璧にこなしてそうな神藤さんの家が、まさかあんなに散らかってるとは」
「ね? 私も初めは驚いたよ」
「まぁ、欠点がある方が、人間らしくていいけどさ。ほら、人と人は、そういうのを補い合っていくもんでしょ?」
「哲学だねぇ」
「カレシいない私が語っても、説得力ないけどね」
ふたりで麺をすすりながら笑う。
「カレシなんてねぇ。私もいないし」
「杏奈には神藤さんがいるじゃん。婚約中で、来年には挙式だっけ? 私も今から友人代表のスピーチ考えとかなくちゃねぇ」
からかわれて、ふてくされる私と、ケタケタと笑う梨乃。
私は、また、不安に襲われた。
「あんなの全部、デタラメじゃん」
「でもさ、コクって成就すれば、嘘が真実になるかもよ?」
「だって何かもう、今更、タイミングがわからなくて」