偽婚


夜。

神藤さんの部屋の、ベッドの中。


あの日以来、私は神藤さんと一緒に眠るようになった。



裸で抱き合いながらの行為の終わりに、煙草を咥えた神藤さんは、思い付いたように「なぁ」と声を掛けてきた。



「最初の約束、覚えてるだろ?」

「何?」

「この偽装結婚の期間は1年、ってやつ」

「うん。もちろん」


すぐに離婚して、結婚に向いてない男だとまわりに思わせるために、神藤さんが決めた期間。

1年経てば、私たちはさよならする約束だった。



「あれ、なしにしないか? お前が嫌じゃなければだけど」

「え?」

「別にそんなことしなくたって、お前との偽装結婚を続けてたら、見合いの話なんてこないし。それに、俺としては、ただ単純に、このままお前と一緒に暮らしてたいと思ってるんだが」


このまま、一緒に。

あまり考えないようにしながらも、心の隅にずっとあった不安。
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