偽婚
「嬉しい。私の方こそ、ほんとにいいの?」

「あぁ。さっきも言ったように、これから忙しくなるから、お前にいてもらわなきゃ困るしな」

「部屋も散らかる一方だしね」

「うるさい。余計なこと言うな」


しかし、神藤さんは笑う。



「でも正直、お前がきてから、いいことばっかで怖いくらいだよ」

「勝利の女神って感じ?」

「バカじゃなきゃ、もっといいんだろうけどなぁ」

「はぁ? そっちこそ、それ、余計な一言だよ」


変わったことと、変わらないこと。

それでも私たちは、言い合って笑い合う。



「おやすみ、神藤さん」

「おやすみ」


キスをして、眠りにつく。



ただただ幸福だった。

こんなにも心穏やかでいられたことなんて、今までなかったから。


先のことなんてわからないけど、でも今は、与えられた日々に感謝して、何も考えずに過ごしていたかった。

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