偽婚
困った顔をする神藤さんを、私は笑った。



「大丈夫。絶対に成功するよ。だから今は、我慢の時なんだと思えばいいんだよ」

「また根拠のない自信が出たな」

「勝利の女神の私が言ってんだから、間違いないでしょ」

「自分で言うな」


言い合って、ふたりで笑う。


とにかく大変らしいが、チョコカフェはオープンに向けて、順調に進んでいるらしかった。

いい風が吹いているなと思う。



元カレは、高峰さんが示談の話を持ち出すと、泣きながら親に電話したらしい。

そして、私のお金は、まさかの一括で返ってきた。


弁護士は本当にすごいと思ったし、これでやっと、私は元カレとの縁が切れたのだ。



ひとつひとつ、着実に、何もかもが上手くいっている、この現状。



「ねぇ、ご飯食べようよ。食べたら元気になれるよ」

「そうだな。これ以上、お前と話してたら、バカが移りそうだしな」

「悪口だ」


神藤さんと出会ってから、私にとってもいいことばかり。

だから、ずっとこのまま、一生、こんな毎日が続けばいいのにと思ってしまう。


それが無理なのは、百も承知だけど。

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