偽婚


それから2日間、悩み抜いた末に、私は答えを出した。

ひとりで子供を育てていく、と。


それが正しいのかはわからないけれど、でも神藤さんの将来も子供の命も守るには、それしかないと思ったから。



私は、夜遅くに帰宅した神藤さんに、



「話があるの」


と、声を掛けた。

神藤さんは怪訝な顔をしながらも、私の向かいに腰を下ろす。



「何だよ? そんな顔して、どうかしたか?」

「別れてほしいの」

「は?」


ネクタイを緩めていた神藤さんの手が止まる。

何を言われているのかという顔だった。


私は、声が震えないようにと懸命に、でも冷静に話を続ける。



「付き合ってる人がいるの。その人と暮らすことにしたから、私、ここを出て行くね」

「おい、ちょっと待てよ。意味わかんないだろ」


神藤さんは、ひどく戸惑った顔だった。

しかし、これは神藤さんのためなんだと、私は必死で自分に言い聞かす。



「私はただ、お金のために、神藤さんと暮らしてただけ。追い出されたら困るから、神藤さんの機嫌取って、うまいことばっか言ってただけ。ほんとは別に、好きじゃなかったけど、仕方ないからセックスしてただけだよ」

「……何、言って……」
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