偽婚
「彼はね、いくら偽装結婚とはいえ、私が神藤さんのおもちゃにされてるのは許せない、一緒に住もう、って言ってくれたの。私がそっちを選ぶのは、当然でしょ?」
何度も考えていた台詞は、つるつると口から出てきた。
「カレシ作らないっていう、最初の約束をやぶったことは悪かったと思ってる。でも、神藤さんだって約束やぶって私に手出したんだから、おあいこだよね?」
「ふざけるな」
「ふざけてないよ。私ね、もうこんな生活、うんざりなの」
「だったら、今までのこと全部、嘘だったのか」
低い声を出す、神藤さん。
気を抜けば泣いてしまいそうで、だから私は必死で声を上げた。
「私は、キャバやってたような女だよ? バカを演じてただけ。嘘しか言わないよ。まさか信じてたわけじゃないよね?」
「お前……」
「だから嫌なのよ、お金持ちのお坊ちゃんは。少しは人を疑えば? そういうところも、全部、うんざりなのよ」
吐き捨てる私。
私の言葉に、神藤さんは顔を覆う。
「次のねぐらを見つけたから、そっちに移るっていうのか」
「私は今までずっと、そうやって生きてきた。男を利用して、何が悪いっていうの? 実際、楽しんだでしょ? 夢見させてあげたんだから、いいじゃない」
「その男が好きなのか」
「神藤さんよりも、ずっといい男だよ」
何度も考えていた台詞は、つるつると口から出てきた。
「カレシ作らないっていう、最初の約束をやぶったことは悪かったと思ってる。でも、神藤さんだって約束やぶって私に手出したんだから、おあいこだよね?」
「ふざけるな」
「ふざけてないよ。私ね、もうこんな生活、うんざりなの」
「だったら、今までのこと全部、嘘だったのか」
低い声を出す、神藤さん。
気を抜けば泣いてしまいそうで、だから私は必死で声を上げた。
「私は、キャバやってたような女だよ? バカを演じてただけ。嘘しか言わないよ。まさか信じてたわけじゃないよね?」
「お前……」
「だから嫌なのよ、お金持ちのお坊ちゃんは。少しは人を疑えば? そういうところも、全部、うんざりなのよ」
吐き捨てる私。
私の言葉に、神藤さんは顔を覆う。
「次のねぐらを見つけたから、そっちに移るっていうのか」
「私は今までずっと、そうやって生きてきた。男を利用して、何が悪いっていうの? 実際、楽しんだでしょ? 夢見させてあげたんだから、いいじゃない」
「その男が好きなのか」
「神藤さんよりも、ずっといい男だよ」