偽婚
「大丈夫だよ。あれで一応、弁護士だし。人の秘密をぺらぺら喋るような人じゃないよ」


私の顔色を読み取り、先に言う梨乃。

仲がいいとは思っていたが、まさか。



「あぁ、もう。今更、隠しておくことでもないと思うから言うけど、私と高峰さん、付き合ってるの」

「は?」


驚きで、思わず涙が止まってしまった。



「何それ、いつから!? 聞いてないんだけど!」

「杏奈の退院パーティーした日、私、酔っ払って高峰さんに送ってもらったでしょ? あのあと、まぁ、そういう関係になって」

「うっそ」


送り狼はしないと言っていたくせに。

私はひどい眩暈を覚えてしまう。


梨乃は顔を赤くしながら、口を尖らせた。



「だって、杏奈が事故に遭ったのを利用してカレシ作ったみたいに思われたくなかったし。あの事故のおかげで出会えたなんて、不謹慎じゃない。だから高峰さんにも口止めしてたの」

「そんなこと思わないよ。普通に言ってくれればよかったのに」

「だって、好きだったとはいえ、先にヤッちゃったし。軽蔑されたくなかったんだもん」


子供かよと突っ込みたくなる。


しかし、高峰さんは、よくわからない男だ。

少し前に会った時には、梨乃と付き合っている素振りなんてまったく見せずに、冗談半分で私を口説くようなことを言っていたのに。
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