偽婚
そのまま、ユキさんに言われた通り、病院に行き、点滴をしてもらった。
少しは楽になったけど、これがいつまで続くのかと思うと、ひどく不安になる。
梨乃の部屋で、うずくまる私。
早く引っ越さなきゃいけないのにな。
あぁ、それよりも、神藤さんの部屋にある私の荷物も、まだそのままだ。
どうしたらいいんだろう。
梨乃に電話しようとして、でも手を止める。
ここしばらく、梨乃や高峰さんとは連絡を取っていなかったが、ふたりだって働いているので、きっと忙しいはずだ。
こんな程度のことすらひとりで乗り越えられなくてどうするんだと思うと、簡単に頼ることもはばかられる。
「ダメな母親だなぁ、私って……」
呟いた時だった。
ピンポーン、と、玄関先からチャイムの音が響く。
誰だろう?
「梨乃?」
梨乃が服を取りに帰ってきたのかもしれない。
そう思い、ふらふらする体を押して立ち上がり、玄関のドアを開けたのだが。
「え……」
そこにいたのは、梨乃ではなくて、神藤さんだった。