偽婚
笑顔が、とても優しかった。
このお母様にだけは、絶対に、結婚が偽装だとは知られないようにしなければと、私は強く心に誓う。
「柾斗。あなたはいい女性を選んだわね。杏奈さんは、強くて、綺麗で、とても素敵な方じゃないの」
「はい。今の僕には、彼女と過ごす毎日が、すごく愛しく思えます」
嘘も方便とはいえ、言われている私の方が恥ずかしくなった。
だけど、一方で、嘘でもそう言ってもらえることが嬉しかった。
「ほら、あなたも何か言ってあげなさいよ。こんな綺麗な子が息子の嫁になったなんて、自慢でしょう?」
お母様は、笑顔のままに、お父様の肩を揺すった。
お父様は何度目かのため息を吐きながら、
「わかったよ。柾斗ももうすぐ30だ。親がいつまでも子供の人生を決めていいわけでもないしな。これからはふたりでしっかり頑張りなさい」
と、しぶしぶながらも認めてくれた。
「ありがとう、父さん」
「ありがとうございます」
ふたりで頭を下げる。
何もかもが嘘なのに、なのに私は泣きそうになってしまった。
こんなにいいご両親に育てられた神藤さんを、少し羨ましいとも思いながら。
このお母様にだけは、絶対に、結婚が偽装だとは知られないようにしなければと、私は強く心に誓う。
「柾斗。あなたはいい女性を選んだわね。杏奈さんは、強くて、綺麗で、とても素敵な方じゃないの」
「はい。今の僕には、彼女と過ごす毎日が、すごく愛しく思えます」
嘘も方便とはいえ、言われている私の方が恥ずかしくなった。
だけど、一方で、嘘でもそう言ってもらえることが嬉しかった。
「ほら、あなたも何か言ってあげなさいよ。こんな綺麗な子が息子の嫁になったなんて、自慢でしょう?」
お母様は、笑顔のままに、お父様の肩を揺すった。
お父様は何度目かのため息を吐きながら、
「わかったよ。柾斗ももうすぐ30だ。親がいつまでも子供の人生を決めていいわけでもないしな。これからはふたりでしっかり頑張りなさい」
と、しぶしぶながらも認めてくれた。
「ありがとう、父さん」
「ありがとうございます」
ふたりで頭を下げる。
何もかもが嘘なのに、なのに私は泣きそうになってしまった。
こんなにいいご両親に育てられた神藤さんを、少し羨ましいとも思いながら。