偽婚
「はぁ!? それでお金のために、偽装結婚した!?」
大声で叫ぶ梨乃を、慌てて制する。
「ちょっ、声大きいって! こんなの話したの、梨乃だけなんだから!」
保育園の時からずっと、姉妹のように育った私たち。
私の言葉に、梨乃ははっと我に返ったらしく、こめかみを押さえて大きなため息を吐いた。
「いくら籍入れてないからって、結婚したフリして、そんなわけのわからない他人と、ひとつ屋根の下で暮らしてるだなんて」
「でもさ、私も初めは不安だったけど、上手くいってるよ。何だかんだで楽しくやってるし」
「そういう問題じゃないから」
引き攣った顔ですごまれ、私は思わず引いてしまった。
まぁ、誰が聞いたっておかしい話だとは思うけれど。
「だってさ、もう二度とあんな惨めな思いはしたくないし。お金さえあれば何でもできるんだよ?」
「うーん」
「それにさ、住み込みの家政婦にでもなったと思えば、そんなに難しく考えなくてもいいし」