偽婚
私の言葉に、男は驚いた顔をした。

ここまで言ったら、もう隠しても仕方がない。



「私、母子家庭で育ったんだけど、お母さん、中3の時に男作って出て行って」

「………」

「それからおばあちゃんに育てられてたんだけど、そのおばあちゃんも、私が高3の夏に亡くなって」

「………」

「父親のことは知らないし、他に親戚もいないし? だから、その時には私もう18だったから、高校辞めて働くことに決めて。それからずっとひとりなの」


自分の境遇ながら、話していて少しだけ悲しくなってしまう。

何も言わなくなった男に、私はわざと明るい声を出した。



「でも、今期のお給料もらったら引っ越しできるから」


だから。



「だから、今日は本当に、迷惑かけてすみませんでした」


頭を下げて、ベッドを抜け出る。

眠っていたからか、体は幾分、楽になっていた。
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