偽婚
食事を片付けたと同時に、布団が敷かれた。
二組が、ぴったりとくっつけられている。
さすがにこれはないだろうと思ったが、でもわざわざ離すのも変な気がするし。
「ねぇ、飲まない? 地酒があるんだって。頼んでいい?」
余計なことを考えすぎてキャパオーバーになった私は、もうこうなったらふたりで酔っ払っていい気分のまま寝ればいいのだと思い付いた。
「疲れてるんじゃなかったのか?」
「でも、地酒だよ? せっかくきたんだから、飲もうよ」
「まぁ、確かに、地酒は旅行の醍醐味だしな」
私の提案に乗ってきた神藤さんに内心でガッツポーズしながら、意気揚々とフロントに電話した。
すぐに酒瓶が運ばれてくる。
「じゃあ、乾杯!」
「はい、お疲れ」
こつんとグラスをぶつける私たち。
飲めば楽しくなって、大抵のことは忘れられるから。
私は、グラスのアルコールを、一気に喉の奥に流し込んだ。