偽婚
頭が痛い。
体が重い。
意識を引き戻し、目を開けると、視界を占めるのは神藤さんの横顔だった。
「ひっ」
声にならない声が出て、体が跳ねる。
何で私、神藤さんに腕枕されてんの?
飛び起きるように体を起こし、まずは着衣の乱れを確認する。
「やっと起きたか」
神藤さんはひどく疲れた顔で私を見た。
「な、何で私たち、一緒に寝てんのよ」
「昨日の夜、お前が俺の腕掴んで離さないまま倒れたからだろ。どうやっても起きないから仕方がなかったんだよ。覚えてないのか」
覚えてない。
まったく覚えてない。
「言っとくけど、何もしてないからな」
神藤さんの睨む目が怖すぎて、私は泣きそうになってしまった。
一晩、同じ部屋で過ごすのだからと警戒していた私の方が、酔っ払って醜態を晒してしまったのだ。
挙句、介抱までされて。
「ごめん」
「もういいから、起きたんなら、帰る支度をしろ」
また睨まれたが、私はもう何も言えなかった。